もし身近な家族が突然、「こんにちは」という簡単な一言すらまともに話せなくなったら、あなたはどうしますか?
脳卒中が発症したとき、対応が 1 分遅れるごとに、脳は約 190万個の脳細胞 を失います。
多くの人がパニックに陥り、水を飲ませたり、薬を飲ませたり、あるいは針で指を刺して血を出させたり(瀉血)といった誤った対処をしてしまい、かえって状況をさらに危険な状態に追い込んでいます。
脳卒中を正しく識別し、致命的な応急処置の誤解を解くことは、誰もが身につけておくべき命を救うスキルです。
脳卒中発症時、体はどのような危険信号を発するのか?
脳卒中の最大の特徴は 「突然」 起こることです。
さっきまで談笑していたのに、次の瞬間には体に異変が起こります。国際的に用いられている識別スローガンは FAST です。
| アルファベット | 英語 | テスト方法 | 観察のポイント |
|---|---|---|---|
| F | Face(顔) | 相手に イーッと笑ってもらう | 顔の左右が対称であるか、片側の 口角が下がっていないか |
| A | Arm(腕) | 相手に 両腕を前に平挙してもらう | 片方の腕が 力なく下がってしまわないか |
| S | Speech(言葉) | 相手に「今日はとてもいい天気ですね」と言ってもらう | ろれつが回っていないか、または全く 言葉が出ないか |
| T | Time(時間) | 症状が現れた 正確な時刻 を記録する | すぐに 119番通報 し、発症時刻を伝える |
これら3つの動作のうち どれか1つでもできない場合 は脳卒中の可能性が極めて高く、直ちに病院へ搬送する必要があります。
FAST以外にもある危険信号とは?
FASTで大部分の脳卒中を捉えることができますが、以下のいくつかの危険信号も見逃してはなりません。
| 危険信号 | 説明 |
|---|---|
| 片側の体の突然のしびれ | 片側の顔、手、足の感覚が突然失われる(正座でしびれたような感覚とは異なります) |
| 突然の視力異常 | 片方の目が見えなくなる(黒いカーテンが突然下りてきたような感覚)、または物が 二重に見える |
| 突然の歩行困難 | お酒に酔ったようにふらつき、真っ直ぐ立つことすら困難になる |
| 激しい突発的な頭痛 | これまでに経験したことのない激しい痛み(雷に打たれたような痛み)で、主に 脳出血 で見られます |
| 突然、言葉が理解できなくなる | 耳は聞こえているのに、脳がフリーズしたように 相手の言うことが理解できなくなる |
脳卒中のときに瀉血(血抜き)をしてもよいのか?水や薬を飲ませてもよいのか?
緊急事態に直面したとき、高齢者などはよく「早く針で指先を刺して血を出せ」とか「血圧を下げる薬を飲ませろ」と言ったりします。
これらの民間療法は 効果がないばかりか、命を落とす危険があります。
3つの致命的な誤解
| 誤解 | 真実 | なぜ危険なのか |
|---|---|---|
| 指先を刺して血を出せば血管が通る | 瀉血(血抜き)では脳血管の中の 血栓を取り除くことはできません | 痛みによる刺激で血圧が さらに急上昇 し、脳出血を悪化させる恐れがあります |
| 急いで水や食べ物を与える | 脳卒中によって嚥下(飲み込み)神経がすでに 障害されている可能性 があります | 水や食べ物が気管に入りやすく、誤嚥性肺炎 や 窒息 を引き起こします |
| 独断で降圧薬を飲ませる | 脳梗塞の際、脳は自らを守るために あえて血圧を高く保とうとします | 勝手に血圧を下げると脳の 酸素欠乏がさらに進み、損傷範囲が かえって拡大します |
瀉血(血抜き)の俗説はどこから来たのか?
東洋医学(中医学)の観点から見ると、指先を刺して血を出す技法は 十宣瀉血(じゅっせんしゃけつ) と呼ばれますが、これは脳卒中の救急救命に用いるものではありません。
十宣瀉血は、末梢神経を刺激することで患者の意識を保たせる 医療行為 であり、プロの鍼灸師・医師が脳梗塞であると判断した場合にのみ施行されるものです。
一般の人が家庭で勝手に行うことは、リスクがメリットをはるかに上回ります。
正しい脳卒中緊急対処ステップとは?
唯一正しい対処法は極めてシンプルですが、冷静かつ迅速に 実行しなければなりません。
| ステップ | 行うこと | なぜ重要なのか |
|---|---|---|
| ステップ 1 | 直ちに 119番通報する | 救急車には救急救命士が同乗しており、搬送先の病院の 脳卒中ホットライン(グリーンチャネル) に事前連絡して準備を整えることができます |
| ステップ 2 | 「最後に正常であったことを確認した時刻」 を正確に記録する | 医師が救命薬を使用できるかどうかを判断するために、この時刻が必要となります |
| ステップ 3 | 患者を 横向き(回復体位) に寝かせる | 嘔吐物や舌が気道を塞ぐのを防ぎ、窒息を回避します |
| ステップ 4 | 襟元やネクタイ など締め付けのある衣服を緩める | 気道を十分に確保します |
| ステップ 5 | そばに寄り添って 気持ちを落ち着かせる | 不安や焦りは血圧をさらに上昇させ、脳の損傷を悪化させます |
何も飲ませない、患者の頭をむやみに動かさない、自力で小さなクリニックへ連れて行かない。
もしやむを得ず自家用車等で搬送する場合は、一般の診療所ではなく、脳卒中の専門救急治療が可能な総合病院 へ直接向かってください。時間ロスを防ぐためです。
なぜ「発症時刻の記録」が命を救うのか?
FASTの最後の文字が T(Time=時間) である理由を不思議に思うかもしれません。
それは、脳卒中の治療薬には極めて厳格な 時間制限 があるからです。
時間制限が医師の治療手段を決定する
| 治療法 | 時間制限 | 原理 |
|---|---|---|
| 静脈血栓溶解療法(t-PA) | 発症から 4.5時間以内 | 薬を用いて、血管を塞いでいる血栓を 溶かします |
| 経皮的脳血栓回収術(カテーテル治療) | 発症から 6〜24時間以内 | カテーテルを脳血管に通し、血栓を 物理的に回収します |
もし家族が明確な発症時刻を答えられない場合、医師は 血栓溶解薬を投与することができません。時間制限を超えて投与すると、かえって脳出血を引き起こすリスクが高まる ためです。
あなたが記録したその「何時何分」こそが、家族が血管を通し、脳細胞を救い出せるかどうかの 唯一の鍵 になるのです。
病院に到着した後は何が起こるのか?
病院では 脳卒中グリーンチャネル が起動し、すべての検査と治療が最優先で処理されます。
| 時間 | 説明 |
|---|---|
| 0〜10分 | 看護師が直ちに血糖値を測定し(低血糖が脳卒中のように見えるのを防ぐため)、採血を行い、重症度を評価します |
| 10〜25分 | 緊急で コンピューター断層撮影(CT) を行い、血管が詰まっているのか破れているのか を確認します |
| 25〜45分 | 医師がCT結果と発症時刻に基づき、血栓溶解療法または血栓回収術 を決定します |
| 60分以内 | 薬の投与が完了し、厳密なモニタリングを行うため 脳卒中ケアユニット(SCU) へ入室します |
国際的な医学基準では、「来院から投与開始まで(Door-to-Needle)」を60分以内 に完了することを目指しています。
症状がすぐに治まった場合でも、受診は必要か?
「一過性脳虚血発作(TIA)」、通称 「ミニ脳卒中」 と呼ばれる状態があります。
症状は脳卒中と全く同じですが、通常は数分から24時間以内に自然に回復します。
「治ったから大丈夫」と絶対に放置しないでください。
ミニ脳卒中は、脳が発する 最後の警告 です。脳血管に深刻な狭窄があるか、不安定なプラークが存在することを示しており、将来的に重大な脳卒中を起こす確率が 極めて高い 状態です。
たとえ症状が数分で消えたとしても、直ちに救急外来を受診して精密検査を受け、医師による脳血管の評価と早期介入を受ける必要があります。
脳卒中に対して私たちができる最善の備えは、FASTの法則を脳裏に刻み込み、誤った民間療法に毅然とノーと言うことです。
いざという時のあなたの冷静な判断と、「〇時〇分に始まった」という正確な情報 が、大切な家族の脳と未来を救うのです。